計測事例

ホーンアンテナから放射されるテラヘルツ波 @ 310 GHz

CADデータ(ホーンアンテナ部分)と実測データとの合成。提供:岐阜大学久武研究室

振幅分布

位相分布

ホーンアンテナから放射されるテラヘルツ波(310GHz)は非常に素直な、イメージ通りの振幅・位相分布となっています。金属でできたホーンアンテナは形状が正確に定義されていて、シミュレーション結果ともよく一致します。ただ、電磁波にとってこんなにシンプルな状況はそんなにありません・・・形状を正確・精密に測定しこれをシミュレーションモデルに反映するのが難しい誘電体オブジェクトを透過した状況では、特に高い周波数帯ではシミュレーション結果と実測可視化結果は乖離します。

Horn antennaはシミュレーションと実測がよく一致する

Horn antennaは金属でできていて、形がリジッドで加工精度も高く製造が可能です。このようなアンテナの近傍界は、シミュレーション結果は我々の装置で測定した実測結果と非常によく一致します。

シミュレーション結果(77GHz)

実測結果(77GHz)

上図は、Horn antennaの近傍界のシミュレーション結果と実測結果です。周波数はおよそ77GHz です。このように、Horn antennaの近傍界はシミュレーションにより推定しても間違いが殆どありません。ただ、誘電率のムラや湾曲、表面に傷等がある誘電体オブジェクトを透過した電場の分布は、シミュレーションと実測は一致しません。正確な誘電体オブジェクトのモデルをシミュレーションに入れることが難しいためです。

スリットで電波は広がる、回り込む

左の図のような金属スリット(幅4mm)に電波(77GHz)が照射されるとどうなるでしょうか?電波はまっすぐ直進するのでしょうか?

下の図は可視化の例です。ホーンアンテナから放射された77GHzのミリ波が左下の軸外し放物面鏡により平面波となり、これが金属スリットに照射されています。可視化されたミリ波は写真と合成されています。スリットの上から観測しています。

振幅分布

位相分布

スリットを透過したミリ波は、広がりながら伝搬します。振幅値は相対的に小さいですが、金属板の真裏にも電波が回り込んでいことが、位相分布を見ればわかります。

ダブルスリットでは?

振幅分布

位相分布

スリットが二本並んだダブルスリットの場合は、単純な球面波ではなくなり、ビームは複数本に分裂します。これくらいの挙動であればまだ簡単な計算でもとまりますし、シミュレーションも簡単です。

金属ポールによる散乱

振幅分布

位相分布

金属ポールに平面波が照射された時の散乱パターンです。波面は平面ですが、光学系のアンバランスによって、振幅分布に少し偏りがあるビームを照射しています。しかも、ビームの中心から少しずらしたところに金属ポールを配置しています。分かりやすいように、少し斜めからの写真と可視化結果との合成ですので、位置関係には誤差が含まれます。散乱パターンはスリットやダブルスリットのような対称ではなく、様々な方向に様々な強度で散乱しているのがわかります。かなり簡単な形状であるポールであっても、入射波の振幅分布や位相分布によって複雑な振る舞いをすることがわかります。この散乱波がほかの物体に照射されてまた散乱され・・・現実の世界では、様々な物体が配置されているのが通常ですので、最終的な電磁波の分布を計算により正確に導き出すのは困難です。


金属ポールに吸収体を貼り付けた効果は?

電磁波は様々な物体により反射・散乱・回折されます。これらをちゃんと制御しないと、思わぬところに悪影響を与える可能性があります。吸収率99.9%の吸収体を使って遮蔽しているから大丈夫!と本当に言い切れるでしょうか?吸収体の吸収率は周波数特性もあれば、角度依存性もあるのが普通です。手当が効いているかどうかは、可視化をすれば一目瞭然です。

金属ポールに吸収体を設置した時の電場(77 GHz)の振幅分布を示します。吸収体Aと吸収体Bはフィルム状のもので、これをポールに巻き付けています。また、粉末の吸収体が練りこまれた樹脂物体を金属ポールの背面に配置したものも比較のために計測しました。もとの散乱パターンを反映して、それぞれの電場分布を大まかには似ていますが、細かいところには違いが見えます。

何よりも、実測により電場分布を可視化すれば、

  • 金属ポールによる散乱波が誤動作の原因となっているのか?

  • 金属ポールに吸収体を貼れば誤動作の原因である散乱波を効果的に抑制できるのか?

が一目瞭然にわかります。

バンパーに濡れた布を付けたら・・・

バンパーを透過した直後のミリ波(77GHz)の振幅分布と位相分布の計測例です。バンパーのR形状により振幅・位相分布はもとのアンテナ近傍界分布から変化していますが、それでも、綺麗な分布が得られています。

ところが、水に濡れたウエスをバンパーに付着させたると、振幅分布、位相分布ともに乱れるます。可視化をすればその様子が一目瞭然です。

バンパーへの水滴のつき方は千差万別ですが、どの程度乱れるのか?どの程度損失が増えるのか?どの程度放射パターンに影響を与えるのか?その最悪値を実験により検証しておくことは非常に大切です。